子どもがのびのび育つ家づくりのヒント

7,867view2016.03.11

こどもがのびのび育つ家づくり

親子で楽しく過ごしながら、子どもがおおらかにのびのびと育つためには、どんな住まいをめざせばいいのでしょうか。ご自身も子育てを経験した建築家・小山和子さんに、住まい全体の設計のヒントと子ども部屋のあり方について実例をまじえてアドバイスをいただきました。

 

  • 親が楽しめる家は 子どもにとっても楽しい

「子どもが楽しく遊べることを最優先にプランしました」「子ども部屋を広くするために、ほしかった趣味室をあきらめました」……一見すると“子ども思い”のこんな家づくり、じつはあまりおすすめできません。おすすめしたいのは、なによりもまず「親が楽しめる家」をつくることです。

子どもは無意識のうちに親から大きな影響を受けるもの。パパとママが夢中になって楽しんでいる姿を見て、同じことに興味をもち、そこからたくさんのことを吸収していくのです。特に子どもが小さいうちに家づくりをするのなら、親が〝住まいを使って楽しんでいる姿〟をどんどん見せて、いい影響を与えてあげてください

 

  • 親子で一緒に楽しむことで 子どもはのびのび育つ

そのためには、まず自分たちのテーマをはっきり決めることが大切。アウトドアが好きなご夫妻なら、キャンプ気分を味わえるデッキを。ハンドメイドが好きなら、作業に打ち込めるワークルームを。これからの暮らしを思いきり楽しむための〝核〟になるスペースを考え、そこを中心に家全体のプランを考えてみてください。

また、子どものどんな素質を伸ばしたいのかを考え、プランを組み立てていく方法も。これからあげる7つのヒントは、それぞれ子どもの成長過程を考えた実例プランをもとに解説しています。ただし、ここでも重要なのは「親も一緒になって楽しめること」。自分たちはさておいて、子どもだけをのびのび育てようとするのは無理な話。自分たちが子どもと一緒に何を楽しみたいのか…そこから伸ばすべき子どもの素質が見えてくるのです。

 

  • 家づくり体験を親子で 共有できれば理想的

もし条件が許せば、家づくりは子どもの物心がある程度ついてから始めるのがおすすめです。ほとんどの家族にとって、家づくりは一生に一度の大プロジェクトですから、大人だけですませてしまうのはもったいない! 家づくりという共通体験を通して親子のきずなも深まりますし、子ども自身の意見をとり入れた家ができれば、その子にとって一生愛着のもてる住まいになるでしょう。

そのためにも、家づくりは他人まかせにしないこと。親子でプランを考え、できれば施工にも参加できたらベストです。左官仕事やペンキ塗りなど、子どもでも挑戦できる作業はたくさんあります。LDの作業をまかせるのが不安なら、「自分の部屋の壁は自由にしていいよ」というように、失敗してもいいスペースを与えてみては。

 

 

【ヒント1】
「活発さ」を伸ばすには 子どもの“バタバタ動線” を生かす

子どもがのびのびと動けるプランの代表が「回遊動線」。LDや個室、廊下、水回りなどを、行き止まりなくぐるりと回れるようにしておくと、子どもはバタバタと駆け回って活発に遊びます。その動線の途中にデッキやバルコニーなどの外空間をとり込み、家の内外をつなげれば、さらに遊びの幅が広がります。

回遊動線は子どもだけでなく、大人が生活するうえでもメリット大。洗濯物干しや掃除、ものをしまいに行くといった家事のストレスを軽減できます。また行き止まりがないことで、光の届かない暗い場所や、空気のよどんでしまう場所もできにくくなります。

間取り1

【Sさん宅】

外空間をとり込んだ“バタバタ動線”を2階にプラン。子ども部屋~バルコニー~浴室・洗面室~子ども部屋をぐるぐる回れます。このプランでは水回りも動線に組み込んだため、お風呂までが子どもたちの遊び場に。夏にはバルコニーに出したプールで遊んだあと、お風呂に直行できます。

kodomo2子ども部屋の南側と北側をバルコニーではさみ、どちらにも出やすくしたプラン。

1-1バルコニーからは浴室を通って洗面室→廊下→子ども部屋へと戻れる動線。水回りの明るさや開放感が増すというメリットも。

 

【ヒント2】
「家事好き」を伸ばすには 子どもの動線の途中に水回りを

料理や洗濯などの家事をよく手伝ってくれる子は、小さい頃から親が家事をする姿をよく観察し、興味をもつことからスタートしています。そこで、子どもの動線の途中にキッチンやユーティリティ(家事室)、物干し場などを組み込んでおくと、子どもが家事を手伝う機会が自然とふえます。

キッチンは独立型よりオープンスタイルのほうが、親が家事をしている姿を目にしやすく、子どもが作業を手伝うのもラク。また子ども部屋の外にあえて物干し用のバルコニーをつくり、子どもに洗濯物を干したりとり込んだりするのを手伝ってもらっているお宅もあります。

間取り2

【Fさん宅】

2つの子ども部屋をキッチンの奥にプラン。子どもたちはLDと自分の部屋を行き来するたびにキッチンを通るため、自然と料理やあと片づけを手伝ってくれるようになります。キッチンカウンターの配置にも注目を。ダイニング側からはまる見えにならず、横を通過するときだけ作業する姿が見えるレイアウトです。

2-2 DKはワンルームでありながら、食事をする人からはカウンター内が見えないようにプラン。

2-3【写真左】キッチン横の通路を進むと、突き当たりが2つの子ども部屋。
【写真右】キッチン横を通りすぎるとき、家事をする姿が見える仕組み。

2-4小学生の次男の部屋。入居後は2人とも部屋をきれいに片づけるようになったそう。

2-52つある子ども部屋はそれぞれ5畳の広さ。こちらは中学生の長男の部屋

 

【ヒント3】
「社会性」を伸ばすには 街に向かって開かれた家に

最近は防犯性を重視するあまり、子どもを家の奥へ奥へとかくまってしまう傾向がありますが、これでは子どもをわざわざ社会から遠ざけているようなもの。誰とでも分け隔てなく接することができる社会性を伸ばしたいなら、住まいのセキュリティやプライバシーにこだわりすぎないことが大切です。

とはいえ、ただ外から室内をまる見えにするわけではありません。たとえば家の一部に街の人と交流できるスペースを設けてみては。同じ年頃の友達だけでなく、ご近所のおじさんおばさんやお年寄りとふれ合う機会をもつことで、子どもの社会性がのびのびと育まれるはずです。

間取り3

【Nさん宅】

東京の下町に建てた二世帯住宅。お祭り好きのNさんは、子世帯のガレージを地域のお祭りの際に「おみこし置き場」として提供できるように計画しました。近所の人が立ち寄る場があることで、街全体で子育てができる環境に。また祖父母のスペースと屋内で行き来できることから、世代を超えたおつきあいも学べます。

イラスト1お祭りのときは玄関脇のガレージを街の人に開放。ご近所さんと自然にふれ合えます。

 

【ヒント4】
「本好き」を伸ばすには 家族共用のライブラリーを

読書が好きな子は、パパやママもたいてい読書好き。実際、親が本をまったく読まずに、子どもだけを読書好きにするのは至難の業といえるでしょう。

親も本が好きで蔵書が多いのであれば、子どもの本と一緒にしまえるライブラリーをつくってみては。親の本と自分の本が一緒に並べてあることに子どもは誇りをもちますし、難しくても大人の本に自然と手を伸ばすようになります。ライブラリーはなるべく個室にしてしまわず、LDKとつながった空間にできれば理想的。本を読めるスペースを設けると、さらに楽しく過ごせるはずです

間取り4
【Tさん宅】

2階の廊下をまるごとライブラリーにしてしまったお宅。左右の壁いっぱいに本棚を造りつけ、家族全員の本をしまっています。同じフロアに個室の子ども部屋もありますが、本を読んだり宿題をしたりするのは、このライブラリーのカウンターで。親子で遊ぶワークコーナーも兼ねています。

hon-1廊下の幅をやや広げ、壁面をすべて本棚とカウンターデスクに。棚には子どものおもちゃも飾って

hon-2【写真左】可動式の棚を造りつけることで、限られたスペースを無駄なく活用。しまいたい本に合わせて奥行きを決められるのもメリット。
【写真右】ライブラリーがあるのはリビング階段の上。階下から声をかければ無理なく届きます。

 

【ヒント5】
「勉強好き」を伸ばすには みんなで学べる"スタディコーナー"を

「本好き」と同様、パパやママが学んでいる姿を見せることこそ、子どもの学びたい意欲をかき立てます。勉強好きな大人は「子どもにじゃまされずに好きな勉強に集中したい」と思うかもしれませんが、子どもへの影響を考えるなら、クローズドの書斎よりも親子で共用できるスタディコーナーのほうがおすすめです。

このスタディコーナーは「わざわざそこに行く」のではなく、暮らしの中で自然と集まれるようにつくるのがポイント。LDからオープンにつなげたり、ママが家事をするキッチンのそばに設けたりすると、利用頻度が高くなります

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【Sさん宅】

子どもがのびのびと学べる住まいの好例。ひとつのデスクに全員が顔を突き合わせるスタイルにしなかったのがポイントです。一緒に遊んだりくつろいだりするときは畳スペースのまん中で、それぞれが勉強に集中したいときは各自の持ち場でというように、行動にメリハリがつけられます。

be-1【写真左】スタディコーナーはダイニングに接続。家族がそばにいるため、独立した空間でも孤立感はなし。
【写真右】カウンター前に窓をつけて、勉強する手元を明るく。その上に本棚をレイアウト。

be-2三方にぐるりと造りつけたカウンターに、それぞれの席を定めて。

 

【ヒント6】
「やさしさ」を伸ばすには 他人を迎え入れられる家に

他人の気持ちを思いやれるやさしい子に育てたいなら、「人と分け合う」ことを経験させてみては。たとえば本やおもちゃを自分の子に独占させるのではなく、お友達と共用にして順番に使わせる。そんな小さな体験が思いやりの気持ちを育てます。

そのために必要なのは「どんな人もウエルカム!」という気持ちが伝わるプラン。誰でも気軽に訪ねられる“敷居の低い家”をめざしましょう。近所の子どもたちと一緒に遊べるプレイルームを設けてもいいですし、昔の「縁側」のように交流の場になるデッキをつくるのも一案です。

間取り5
【Yさん宅】

家族のライブラリー兼スタディルームを、近所の子どもたちに開放しているお宅。玄関を入ってすぐの場所にあるため、LDを通過することもなく、訪ねる側にも気兼ねがいりません。遊びに来た子どもたちは、玄関脇に自転車を止めて自由に出入り。街のミニ図書館として活躍しています。

yasashisa-1本のぎっしり詰まった棚が圧巻。中央にはみんなで使えるデスクを。

イラスト22面の壁を造りつけの本棚に。大人の本から絵本まで、蔵書をたっぷりおさめられます。

 

【ヒント7】
「個性」を伸ばすにはキャラクターに合った子ども部屋を

家づくりをする段階で、すでに子どもの性格や好みがはっきりしていれば、それに合った子ども部屋を用意することができます。たとえばものづくりが好きな子なら、傷がついても気にならない床材を。狭いところにもぐり込むのが好きな子なら、あえて小さくて落ち着ける子ども部屋を。壁や天井、カーテンなどにその子の好きな色をとり入れるだけでも、子どもの感覚に大きく影響します。

ただし次ページからお話しするとおり、子ども部屋はあまりつくり込まないのが鉄則。凝った内装にする場合も、将来簡単にリフォームできるのがベストです

間取り6【Yさん宅】

11歳の長女、9歳の長男、7歳の次女の部屋を、それぞれのキャラクターに合わせてプラン。昆虫好きの長男の部屋には、外に出られる掃き出し窓をつけたり、インテリア好きの長女の部屋は自分で家具を選んだり。子どもたちがのびのびと個性を発揮できる住まいになりました。

kosei-1長男の部屋はラフなアンティークパイン張り。汚れたり傷がついても気になりません。

kosei-2【写真左】長女の部屋の床は大人っぽいレッドシダー。これから目地にしっくいを詰める予定とか。
【写真右】次女の部屋はナチュラルで愛らしい雰囲気に。活発に遊べるようにロフトも設けました。

 

 

ところで・・・ 子ども部屋って ほんとうに 必要?

小さいうちは子ども部屋で 遊ばない子がほとんど

欧米にならって日本でも「子ども部屋は1人1部屋」という考え方が根強いようですが、もし面積にゆとりのない狭小住宅で、子どもがまだ小さい家庭なら、最初から個室の子ども部屋にこだわる必要はありません。その理由はまず、小さいうちは親のいる場所で遊びたがるので、子ども部屋が単なる物置になってしまうケースが多いこと。そして、将来その子が個室の子ども部屋をほしがるとは限らないことです。

「子どもがすぐリビングにおもちゃを持ち込むから、片づけるのが大変!」というママのお悩みからもわかるとおり、小さい子は親の目の届くところで遊びたいのが普通です。そして「こんなことに興味があるんだね」「こういうものを大事にしているんだね」と、自分の行動や持ち物を大人に認めてもらうことで、人格や個性が育っていくのです。

さらに、子どもは自分にとって居心地のいい場所を見つける天才。親も知らないうちに、自然とそこを自分のスペースにしてしまいます。私たちが設計したあるお宅では、お兄ちゃんは玄関のシューズクローゼット、妹さんは和室の床の間を自分のスペースにしてしまいました。勉強などもそこでするため、用意した2つの子ども部屋はほとんど使われていません。このように、親が計画したとおりに、子どもが住まいを使ってくれるとは限らないのです。

子どものこうした習性に眉をひそめるのではなく、自分のスペースを自分自身でつくり上げていくことで、創意工夫が育まれていると考えてみては。実際、与えられた空間を与えられたとおりに使うより、自分なりになんとか使いやすくしようと工夫する、その経験から学べることは多いのではないでしょうか。

ほしくなったときに 与えるのが理想的

こう考えていくと、大人が最初から「子ども部屋はこうしておくといいだろう」と決めてかかるのは、あまり得策ではないことがわかります。家をつくる時期に子どもがある程度の年齢になっていれば、本人の希望を生かした子ども部屋をつくれますが、それより前ならなおさら、子ども部屋はあいまいにつくっておいたほうがいいでしょう。冒頭でもお話ししたとおり、まずは夫婦で楽しめるプランを優先させて、将来子どもが自分のスペースをほしがったら、そのときに与えられるようにしておくのがベストです。

たとえば、子ども部屋ではなく夫婦の趣味室をつくっておいて、子どもが部屋をほしがったらそこを親子で分け合うプラン。広々としたLDで暮らしを楽しみつつ、子どもが成長したらその一角を明け渡すプラン。「これから10年間は目いっぱい子育てを楽しみたい!」と思うなら、LDからずっと見守っていられるプレイスペースをつくるのもいいでしょう。

こうしたプランは、子どもが巣立ったあとにも使いやすいというメリットがあります。子どもが子ども部屋を必要とするのは、ほんの10年足らず。「子ども部屋らしい子ども部屋」はほかの用途に使いにくいものですが、目的をあいまいにしたスペースなら、夫婦二人の生活になったときもフレキシブルに使えます。LDの一角を仕切るスタイルなら、もとの広々としたLDに戻すのも簡単です。

室内のつくりは、自由に できる余白を残して

もし個室の子ども部屋をつくるなら、室内のつくりや仕上げをあいまいにしておきましょう。たとえば壁に壁紙を張らず、下地材のままにしておけば、自由に落書きをしたり画びょうを打ったりできます。大きくなったら自分で好きな色にペイントするのもいいでしょう。収納も細部までつくり込まず、ざっくりした“箱”だけを与えておいて、内部を自由に仕切れるようにします。最初から造りつけ収納をつくらず、自分で何でも決められる年齢になったとき、予算を決めて好きな家具を選ばせてみるのも一案です。

これらのアイディアはすべて、子どもの創意工夫や自主性を伸ばすことにつながります。未完成な空間を与えられると、子どもは自分なりに工夫し、個性をのびのびと発揮できるはず。「部屋とともに自由を与える」という発想が大切です。もちろん、内装や収納などを未完成のままにしておくことは、コストダウンにも貢献。さらに子どもが独立したあともアレンジしやすいので、一石三鳥のアイディアといえるでしょう。

 

子ども部屋をつくらなかったOさんの場合

間取り7
現在は夫婦二人暮らしのOさん。あらかじめ子ども部屋を用意するのではなく、必要になったときにLDの一角を仕切り、子どもスペースとして使えるように想定しました。子どもが生まれるまではゆったりした広さを満喫。仕切ったあと、子どもスペースLDKと同じフロアになるのも理想的です。イラスト3

c1-1ダイニングの一角のフリースペース。将来、ここを子どもスペースにする手もあります。

c1-2DKとリビングがT字形につながる間取り。窓の外のデッキも、くつろぎの場として活躍。

c1-3 将来は、仕切らずに子どもスペースにしても、壁を立てて独立した子ども部屋にしてもOK。

 

子ども部屋をつくらなかった Ⅰ さんの場合

間取り8

5歳と0歳のお子さんをもつⅠさんは、リビングとダイニングの間に子どもスペースを用意。ただし、最初から個室にしてしまわず、将来仕切る際のガイドラインとなる柱だけを立てておきました。LDと子どもスペースを合わせた面積は、なんと30畳。子どもたちは広さを目いっぱい使ってのびのびと遊んでいます。(本No.17)

イラスト4

c2-22本の柱が将来仕切るときのガイドライン。壁を立ててドアをつければ、子ども部屋が完成。

c2-3子どもスペースの上はロフト。ベッドとしても使えます。

c2-4【写真左】ダイニングの一角につくったワークスペース。いずれお子さんの宿題を見たりするのにも使えます。
【写真右】ダイニングは子どもスペースのすぐ横。対面式キッチンからも子どもたちの遊ぶ様子を見守れます。

c2-1子どもスペースを中心に、ダイニングとL字形につながるリビング。

 

 

アドバイス

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小山和子さん

ナチュラルな家づくりが人気の設計事務所
「プランボックス」を主宰。

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