狭小住宅の片づく収納計画のコツ

1,943view2017.06.28

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家づくりのプロが口を揃えてアドバイスするのが「小さな家ほど収納が必要! 」ということ。収納が少なくモノがあふれている家は、実際より狭く感じられてしまうからなのだそう。ここでは、特に狭小住宅で役立つ収納スペースのつくり方を解説していきましょう。

 

CASE STUDY

15坪の変形敷地に建てた収納充実の小さな家

S さん宅( 東京都 )

細長い三角形の敷地に立つ3 階建てが、S さんの新居。建築面積は10坪ほどですが、インテリアショップを手がけるハウスビルダーに家づくりを依頼し、女性設計士のきめこまかなアドバイスを受けて、すっきり暮らせる住まいが完成しました。

 

DATA

家族構成   夫婦+子ども2 人

敷地面積   約50㎡( 約15坪 )

建築面積   約33㎡( 約10坪 )

延べ床面積 約99㎡( 約30坪 )

           1F33㎡+2F33㎡+3F33㎡

構造・工法 木造3階建て(軸組工法)

設計・施工 FILE( 石川敬子 )

           file-g.com

LDK は2 階にプラン。敷地の形に沿って建物の幅も狭くなっていますが、この狭いほうをリビングにしたのがポイント。

 

建物の幅の広いほうがキッチン。普通に考えると、広いほうがリビングに向いていそうですが…実はここにすっきり暮らせるヒントが隠れているんです!

 

「収納しなければならないモノが多いのは、実はリビングよりもキッチン。そこでキッチンのほうに大きな面積を割いて、収納スペースを十分に設けたんです」と設計の石川さん。家具のように美しいキッチンカウンターもそのひとつ。

 

壁ぎわの背面収納には、おもに食器や調理器具などを収納。カウンターのダイニング側には、おもにLDで使う生活用品をおさめています。カウンターの奥行きをたっぷりとったことで、これだけの収納量が生まれ、LDが散らかるのを防いでいます。

 

壁が斜めになったところにも、しっかりと収納が。既製品のキッチンではここまで対応できませんが、Sさん宅では造作キッチンを採用したため、変形した部分まで無駄なく活用できました。

 

建物の幅のゆとりを生かして、キッチン脇にワークスペースもつくれました。作業するだけでなく、雑然としがちな書類などの収納にも活躍しています。ファイルケースを白で統一したのもポイント。

 

玄関ドアの横のちょっとしたすき間も見逃さず、収納として活用。幅は狭いけれど高さがあるので、意外とたくさんしまえるそう。

 

1 階の北側には納戸をプラン。「居室の面積を削ってでも、こうした収納スペースをつくっておくと、小さな家でも部屋がモノであふれることがなく、快適に暮らせるはずです」( 石川さん )

 

狭小住宅で無駄のない収納をつくるには?

狭小住宅に向くとされる収納計画は、置き家具と造りつけ収納の併用。インテリアを楽しむために小ぶりな置き家具を使い、あまり見せたくない雑多な生活用品は機能的な造りつけ収納にしまう、という方法です。CASE STUDYのS さん宅でも、造りつけ収納をフル活用しつつ、リビングやダイニングではコンパクトなキャビネットとシェルフを使っていましたよね。

その家に合わせてつくる造りつけ収納は、スペースを無駄なく使えるうえ、内部の使い勝手も自由自在。ただ、造りつけ収納を家具工事として家具屋さんに発注すると、かなりハイコスト。そこでおすすめなのが、木工事を担当する大工さんにお願いする手です。

ポールや棚をつけたシンプルな箱を大工さんに造りつけてもらい、建具屋さんに扉や引き戸をつけてもらえば完成。引き出しは手ごろな既製品を使います。扉のかわりにカーテンやロールスクリーンで目隠ししたり、DIYでポールや棚を設置したり、「IKEA」の収納ユニットを大工さんに組み立ててもらうというコストダウンテクニックもあります。

 

 

奥行きの浅い収納にはメリットいっぱい!

狭小住宅での収納計画は、「間口を広く・奥行きを浅く」が鉄則。奥行きの深い収納は大きな面積をとるだけでなく、手の届かないデッドスペースができてしまいがち。そこに押し込んだモノは取り出しにくいので使わなくなり、持っていることすら忘れてしまうことも。なるべく間口が広く、奥行きの浅い収納をつくっておけば、省スペースですむうえに、入っているモノが一目で見渡せて、死蔵品ができる心配がありません。

 

延べ床面積22坪の狭小住宅。キッチンでは、動きやすい通路の広さと、中にしまうもののサイズを考えて、奥行きの違う2タイプ壁面収納を造りつけました。(Oさん宅)

 

同じお宅の階段の踊り場。壁の幅いっぱいに奥行きの浅いオープンシェルフを造りつけ、飾り棚として活用しています。

 

納戸はⅡ型が正解

納戸をつくるときも、通路の両側に浅い棚を設けたⅡ型がベスト。正方形の納戸はコーナー部分がデッドスペースになりやすく、納戸の中央にも無駄な空間ができてしまいます。ウォークインクローゼットも同様にⅡ型にして、天井まで目いっぱい収納スペースに。上部にポールをつけ、下のほうに引き出しケースを置けば、スペースを無駄なく使えてローコストですみます。

布団を収納する押入れは、奥行きがありすぎたり、仕切り段の高さが中途半端だったりと、使いこなすのが難しいことも。高くて奥行きの深い天袋も、死蔵品の巣になりがちです。そんなときは、しまうものにちょうどいい押入れをプランしてみては。

たとえば天井までいっぱいに押入れにして、仕切りを3 段にしたタイプ。既製品のふすまは寸法が決まっているので、建具屋さんにオーダーするか、ローススクリーンで代用します。「寝室は布団派」というかた、「両親が泊りにくるので、来客用の布団は必須」というかたは、ぜひ参考に。

通路の両側に収納を設けた、Ⅱ型のウォークインクローゼット。片側にはポールをつけ、反対側には手持ちのタンスを置いています。洗面室~寝室へ通り抜けられるのもポイント。(Aさん宅)

 

 

人が入れる納戸をつくるだけの面積がない場合は、廊下などに面したオープンな納戸もおすすめ。このお宅では3階の廊下に沿って、2.8畳もの広さの納戸をつくりました。ロールスクリーンで目隠しをすれば視界もスッキリ。(Fさん宅)

 

洗面所には意外と収納スペースが必要!

狭小住宅でよく見られるのが、LDを広くするために洗面室の面積を削ってしまうケース。でも、洗面室では着替えに洗面・歯みがき、メイク、洗濯までさまざまな作業をしますよね。そのぶん、洗面用品からシャンプーのストック、バケツや洗剤、体重計、タオル、家族の下着まで、収納したいものの種類も量も多いもの。つまり洗面所には、想像以上に収納スペースが必要なんです。

そのため、設計者の多くは、くつろぎの場を少し狭くしてでも洗面室にスペースを割くことをすすめます。将来、年齢を重ねて体が不自由になったとき、洗面室が狭いと生活しにくいからという理由もあるようです。

洗面室で役立つのは、やはり造りつけ収納。簡単なオープンシェルフをつくって、かごや引き出しを組み合わせる方法が人気です。また、意外と重宝なのが床下収納。ふつうはキッチン向きと思われていますが、狭い洗面所では掃除用具や洗剤、シャンプーなどのストックに役立ちます。ただし「足元の冷えが気になる」という声もあるので、とり入れるときは設計者によく相談を。

 

オープン棚+かご収納を採り入れた洗面室。棚板の位置を自由に変えられるので、かごのサイズにぴったり合わせられます。湿気のこもりやすい洗面ボウルの下はオープンに。(Kさん宅)

 

 

玄関の大型収納はマスト! という声も

洗面室のほかに収納を重視したいスペースは、ずばり玄関。特にマンション住まい経験者には、「玄関収納が全然足りない! 」という思いをした人も多いのでは?

そのせいか、狭小住宅でも玄関にシューズクローゼットをつくったり、大きなものを置ける土間スペースを設けるプランが人気。やはりLDや寝室などの居室の面積をしぼって、玄関収納にゆとりをもたせている人が多いようです。特に注目されているのは、たたきから直接入れるシューズクローゼット。靴やコートなどのほか、キャンプ用品や大工道具、子どものスポーツ用品、買い置きのビール、宅配のダンボール箱などの置き場に役立つという声がよく聞かれます。

敷地そのものが狭い狭小住宅では、あとから家の外に物置などをプラスするのは難しいはず。戸外で使うような汚れがちなものを、家の奥まで運び入れなくてすむように、玄関に大型収納をつくるのはいいアイディアかもしれません。

 

延べ床面積24坪の狭小住宅ですが、玄関のたたきから入れるシューズクローゼットを採用。入ると右側の奥が深くなっていて、内部は1畳もの広さがあります。扉は風通しのいいルーバータイプを選びました。(Oさん宅)

ミニマルな暮らしも検討してみて

必要な場所に、使いやすい収納を十分に設けて、持ち物を機能的にしまえるようにするのが、収納計画の基本。でも、それと同時に考えてみたいのは、持ち物そのものの質と量についてです。

最近は、モノを持たずに豊かに暮らす方法を追及する人がふえてきました。生活用品も衣類も必要最小限にして、ほんとうに必要なもの、好きなものだけに囲まれて暮らすというライフスタイルです。

こうしたミニマリストの暮らしは、話題になってはいるものの、実際には少数派。「理想的だけどうちは無理!」「子どもがいるからモノが多いのは仕方ない!」という意見のほうが一般的でしょう。

でも、これから狭小住宅を建てて住みこなそうとする人にとっては、ミニマルな暮らしから学べることは多いもの。たとえば、それほど気に入ってはいないものや、使うか使わないかわからないもののために、収納スペースを用意する? いつあるかわからないパーティのために、よそゆきの服をとっておく? 友達が遊びに来てくれたとき、来客用の食器ではなく、ふだん使いの食器でおもてなししたら失礼? など、こんな考え方ひとつで、収納計画にも違いが出てきますよね。

ミニマリストを目指すのは難しいとしても、家づくりにあたって、自分たちの持ち物の質と量を見直すことは大切。考え方によっては、狭小住宅を建てることが、シンプルでスリムな暮らしをスタートさせるきっかけになるかもしれません。

まとめ

いかがでしたか?  まずは暮らしに必要なものを見直してみること。さらには「狭小住宅だから、収納もできるだけ少なく」と考えるのではなく、必要なところにポイントを絞って収納を充実させること。それがくつろぎやだんらんの場の居心地アップにもつながるはずです。

この記事のライター:後藤由里子
主婦の友社刊「はじめての家づくり」をはじめ、数々の住宅・生活関連記事を手がけるライター。キャリアは20年、これまでの実例や建築家、ハウスビルダーへの取材件数は300以上に及ぶ。

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