パッシブデザインで、夏涼しくて、冬暖かい家づくり case1

389view2017.07.20

DMA-018

夏は熱帯夜が続き、季節を問わず異常気象の多い昨今、「夏涼しくて、冬暖かい」家がますます求められています。

快適とは、家本体にも住む人にも心地よいということ。「一年中快適」な家で健康的に暮らす事例を紹介します。

パッシブデザインって何?

家づくりにおいて、最近よく耳にする「パッシブデザイン」という言葉。これは、エアコンや暖房機などの機械に頼らずに、太陽の光や熱、そして風といった「自然エネルギー」を上手に採り入れることで、快適な暮らしを目指す設計のあり方です。省エネルギーの視点からも注目されています。

夏は熱帯夜が続き、季節を問わず異常気象の多い昨今、「夏涼しくて、冬暖かい」家がますます求められています。

快適とは、家本体にも住む人にも心地よいということ。「一年中快適」な家で健康的に暮らす2軒を紹介します。

 

case1

自然の恵みを存分に生かした五感で心地よさを味わう家

東京都 Kさん

2階建ての上に南向きのロフトをのせたプランです。夏場は暖まった空気が勾配屋根に沿って上り、窓から自然に抜けていく仕組み。反対に冬場は階下のパブリックスペースに暖かい空気が下りてきます。平らな屋根面には芝を植え、断熱に役立てました。

また、敷地の南側に庭を広くとり、それを囲むようL字形に建物を配置させました。1階も2階も庭に面して大きな開口部を設け、日ざしと風を室内の快適さに役立てています。

見上げるほどに葉をしげらせるモミジ、表情豊かなシダ、そしてしっとりと土を包み込む苔……。Kさん宅の庭は豊かな雑木林のよう。木々を通して望む建物は、まるで山荘のような印象を与えます。

屋内にも自然の恵みがいっぱい。無垢のカバ材や火山灰でできた塗り壁、自然乾燥させた天竜杉の梁など、枚挙にいとまがありません。

「こうした作風を雑誌で知り、建築家の瀬野和広さんに設計をお願いしました。アレルギーのある家族がいるので、なるべく負担の少ない素材を使いたくて。プランはほぼおまかせでしたが、日当たりも風通しもよく、あまりエアコンに頼らなくてすむ間取りを提案してくれました」と奥さま。

「両側の窓を開け放すと、ヒューッと風が吹き抜けていきます」というように、2階のLDKは東側と西側をバルコニーにはさまれた形。庭に面した東側の窓からは、朝からたっぷりと日ざしが入るため、冬は暖房いらず。エアコンや蓄熱式ヒーターも設置しましたが、あくまで補助的に使っているといいます。

「真夏の盛りはもちろん暑いですよ。でも、夏って暑いものですし(笑)、自然の風が気持ちいいので、不快な暑さではないんです。窓を開けておくと、木々の葉ずれのサラサラという音が聞こえてきて、耳にも涼しい。モミジの葉のみずみずしいグリーンを見ていると、涼やかさを感じます」

瀬野さんの提案を受け、“パッシブデザイン”の考え方を積極的にとり入れたKさん宅。屋根面に芝を植える「草屋根」もそのひとつです。

「日本の住宅の屋根はもともと植物。手入れいらずで効果の高い草屋根は、もっと見直されていい断熱工法だと思いますよ」と瀬野さん。緑で覆われた屋根は、子どもたちの遊び場にもなっているそう。

平らな草屋根とあわせてプランしたのは、三角屋根のロフト。夏には吹き抜けを通してここにたまった熱い空気が、窓から自然と抜けていきます。これも室内の温度を調節するための知恵。あくまで自然の原理を生かしながら、心地いい室内環境をつくり出しています。

 

外観

道路側の間口が長い、恵まれた敷地。奥に広がる庭へのゲート(門)のようなイメージで、どっしりと安定感のある外観デザインを採用しました。木製のバルコニーには和の表情も。

 

中庭

快適ポイント 緑豊かな庭が室内の温度調整にも貢献

「この庭は“天然の空気清浄器”みたいなもの」と設計担当の瀬野さん。高く伸びた木々の影と草木で覆われた土が、屋内の温度が上がりすぎるのを防いでくれます。2階は庭側がすべてバルコニー。豊かな緑がより身近に感じられます。

 

LDK

庭側の全面が掃き出し窓なので、明るさや風通しのほか、開放感も抜群。強すぎる日ざしは縦型ブラインドで調節します。天井にずらりと並ぶ梁は天竜杉。

道路側の壁面には、圧巻の本棚が。「家族全員、読書が大好きなので、収納力のある本棚はぜひ欲しかったもの。友人もブックカフェがわりにくつろいでいきます」

 

快適ポイント 掃き出し窓の反対側に風抜き用の地窓をつけました

本棚の下には小さな窓が。中庭側の掃き出し窓からとり入れた風が、ここに向かって流れる仕組みです。落下防止のため、窓の外にはバルコニーを。

 

快適ポイント 深夜電力を利用できるエコな暖房機を

深夜帯の安い電力を使って内部に熱をため、翌日ゆっくりと放出する蓄熱式暖房機。「天気予報を見て、次の日が寒そうなときにスイッチを入れます」

 

快適ポイント 風通しに有効な引き戸を多用

LDKの奥に続くのは子ども部屋。将来は仕切って使えるよう、壁の両側に出入り口を設けました。建具はどちらも引き戸なので、開けたままにして風を通せます。

キッチン

ステンレストップのアイランドカウンターはゆとりのサイズ。「お客さまも調理やお皿洗いに参加してくれます」。頭上にはロフトにつながる吹き抜けがあり、空気の通り道になっています。

 

スタディスペース

快適ポイント 階段ホールも仕切らず風の通り道に

各フロアの窓から光と風が入る、オープンな階段ホール。ロフトに続く階段は光を遮りにくいスケルトンタイプにして、スタディスペースまで明るさを届けています。

 

快適ポイント 調湿性にすぐれた自然素材を内装に

壁は火山灰が原料の左官材、床は無垢のカバ材をワックス仕上げに。どちらも室内の湿気が多すぎるときは吸い、少ないときは吐き出してくれる素材。見た目や肌ざわりの素朴さも魅力。

 

寝室

寝室も中庭に面してプラン。「南向きなので、家じゅうでいちばん暖かい部屋です」。ここにもロフトにつながる吹き抜けがあり、上下階で空気が循環しています。

 

ロフト

快適ポイント 2階フロア全体の温度を一定に保つロフト

LDKや寝室の温熱環境をととのえるロフト。窓から入った風が勾配天井に沿って流れ、吹き抜けから階下へと下りていきます。すのこ状の床にも風と光を通す役割が。

 

快適ポイント ルーバーの角度は太陽の高さに沿った設定

ロフトの窓の前に立てたフェンスは、ルーバーの角度にひと工夫。太陽の位置が高い夏には直射日光を遮り、低くなる冬には屋内まで日ざしが届くように設計。

 

屋根

快適ポイント 芝を植え草屋根遮熱効果抜群!

壁面の数倍もの日射熱を受ける屋根面。ここの断熱性は家全体の快適さを大きく左右します。草屋根は効果が高いうえ、「管理は雨不足のときに散水スイッチを入れるだけ」と簡単。

 

浴室

快適ポイント バスコートをつなげて風通しのいい浴室に

一般的な浴室向けの小窓ではなく、高さも幅もある掃き出し窓を設け、外にデッキ張りのバスコートをつなげました。風通しがいいためカビ知らずで、明るさも抜群。戸外とつながる開放感も味わえます。

洗面室

洗面・脱衣室も湿気が気になるスペース。プライバシーを確保しながら通風できるよう、高窓や地窓を活用しました。右手前の壁面にはタオルウォーマーが。やさしい暖かさで暖房にも役立つそう。

 

玄関

快適ポイント 玄関と庭の間にも開放できる引き戸を

玄関に入るとゆったりしたたたきが広がり、正面には庭が。天井までいっぱいの引き戸を開けると、屋内外の一体感が高まります。寒さ対策として、玄関ホールにも蓄熱式暖房機を用意。

 

駐車スペースから望む庭。格子戸越しに見える緑が美しく、いっそう風情を感じられます。道行く人からも見えるので、街の彩りとしても。

設計のポイント

瀬野和広+設計アトリエ

瀬野数広

1957年山形県生まれ。東京デザイナー学院スペースデザイン科卒業後、大成建設設計本部などを経て、88年に現事務所を設立。2009年より東京都市大学都市生活学部非常勤講師に。


どんなプランにも共通することですが、空気は入り口と出口をつくって、しっかり循環させることが大切。向かい合わせに窓を設けるほか、
Kさん宅のように吹き抜け+ロフト+高窓をつくり、家全体の暖かい空気が自然と抜けていくようにプランするのもおすすめです。さらに、太陽の高さに合わせた軒の計画、空気中の水分量を調節してくれる素材選びなども、健康&快適に暮らせる家づくりに役立ちます。

DATA

家族構成 夫婦+子ども2
敷地面積 203.79㎡(61.65坪)
建築面積 81.20㎡(24.56坪)
延べ床面積

145.74㎡(44.09坪)

 

1F72.87㎡+2F72.87

構造・工法  木造2階建て(軸組み工法)
工期 20125月~12
設計

瀬野和広+設計アトリエ

03-3310-4156

www1.odn.ne.jp/aaj69100

 

施工 内田産業 049-242-0980
造園 藤倉陽一042-363-2452

 

>> パッシブデザインで、夏涼しくて、冬暖かい家 事例2を読む

   

 

 

  

  

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