公園のように楽しい、中庭を中心にした スキップフロア

941view2017.09.11

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 津村さん(神奈川県)

 リビングに入ると、階段のある中庭がまっ先に目に飛び込んでくる津村さんのお宅。奥さまは以前から、建築家が手がけた家を紹介する番組を欠かさず見るほど、オリジナリティのある家に関心があったとか。「家をつくることになって住宅展示場も見ましたが、プランが平凡だし、仕様もたいてい既製品から選ぶので、やっぱり住みたい家とは違うな、と思ったんです。キッチンのような大きな部分だけでなく、手すりとか、壁の下に回す幅木とか……」。ご主人も「妻といろいろ見るうち、既製品とオリジナルのものの違いがわかってきたので、建築家に依頼する方向で考え始めました」。

 雑誌なども参考にして、自分たちの好みに合う建築家をピックアップしたなかで特に気に入ったのが、「ノアノア空間工房」の大塚泰子さんでした。女性目線が生む、住み心地のよさそうなプランやシンプルなデザインにひかれ、一度相談してみることに。

「予算は2000万円だったので、その金額で建てられるか心配でしたが、『はじめての家づくり』でも1000万円台で建てた家の記事があったので、大丈夫かもしれないと思って(笑)。とにかく行くだけ行ってみようと」

 そのときにはすでに土地も見つかっていたので、敷地図を持って事務所を訪ね、予算を告げたところ、「大丈夫ですよ!」と力強く言ってもらえたそう。迷わず依頼することに決め、さっそくプランをつくってもらい提示されたのが、この中庭のあるプランです。「中庭のある家に憧れてはいたけれど、まさかこの予算で実現するとは、衝撃というか感動でした」。こまかい注文は出さずに信頼しておまかせにした結果、想像を超える魅力的なプランになったのです。

中庭があるから光が家じゅうに。家族の気配も常に感じられます

 津村さん宅の土地は高低差があり、その形状を生かして、中庭のまわりをスキップフロアで半階ずつ上がっていくつくりになっています。中庭を通してリビングと子ども部屋を行き来でき、階段はベンチにも。中庭を囲む廊下では、兄弟がサッカーをしたりと、家じゅうが公園のよう! 常に家族の気配が感じられるのも魅力です。
「大塚さんのセンスがとても気に入っていたので、不安はまったくありませんでした」とご夫妻。最良のパートナーを得て、愛着のもてる家が完成しました。

外観

西側の道路から見ると、シンプルなボックス形。1カ所大きくあけた窓がアクセントで、照明をつけるとまた違う表情に。

1F 中庭

1階のリビングと、手前にある中2階の子ども部屋をつなぐ役割も。敷地内の高低差を生かしたため、階段のある中庭に。

階段をらせん状に上がるスキップフロア。最後に浴室があり、親子で「じゃんけんグリコ」をしながらお風呂へ行く楽しみも!

1F リビング

リビングと中2階の南側の通路は、壁でふさがずオープンにしました。子どもたちは階段下にもぐり込んで遊んだりしているとか。

1F DK

コンロ前の壁は、コストの関係でタイルをあきらめてパネルに。掃除がラクで結果的によかったとか。テーブルはカウンターの幅に合わせてオーダー。レンジフードは奥さまの希望で「サンワカンパニー」に。壁いっぱいに造りつけた棚は頼もしい収納量。

1F キッチン

リビングから見えない位置に冷蔵庫と水きり棚を。大塚さんのオリジナルキッチンは使い勝手抜群。ご主人も料理をするのでカウンターは高めの87.5㎝。天板は合板の表面にステンレス、断面に木目シートを張ったローコスト素材。

1F LD

壁面の下半分のコンクリート部分は、敷地に高低差があるために深く築いた基礎を、そのまま見せてアクセントに。高低差を逆手に! 南側は隣家が迫っているので、中庭から採光。左奥の窓は北向きですが、午前中、北側の建物の壁に反射した光がさし込みます。「この家に暮らして、ただ明るいだけではない陰影の美しさを知りました」

壁の下部は既製の幅木のかわりに、ソファ正面の壁にそろえてコンクリートを幅木風に。建築家ならではの案で奥さまのお気に入り。

1F 書斎コーナー

通路の一角に書斎を。デスクと棚板は、安価な構造用合板をペイントしたもの。ごつごつした手ざわりにかえって味わいが。

デスク背面の窓と中2階への階段。窓の外の中庭には四季が感じられるシンボルツリーが。

MF 子ども部屋

将来、兄弟のスペースを仕切れるよう、入り口の引き戸を2つ設置。上部のアールのデザインにも建築家のこまやかなセンスが。

MF 和室

ファーストプランでは納戸だった場所を、将来ご主人のお母さまと同居できるよう和室に変更。プランの大きな変更はここのみとか。

M2F トイレ

トイレはここ一箇所だけですが、1階からも2階からもアクセスしやすい場所なので不都合はありません。清潔感のある白で統一。

2F 洗面室

洗濯機のある洗面室から中庭に面したデッキに出られるので、家事動線がスムーズ。右手の引き戸内は大型納戸。日用品収納や来客時にモノをしまうのに重宝。

洗面台も鏡もワイドで、家族が並んで使えます。

2F 浴室

雑誌などで見ていた、大塚さんデザインのおしゃれな造作のバスルームに憧れていましたが、予算の関係でシンプルなシステムバスに。

2F 廊下

寝室前の廊下。暗くなりがちな廊下も、中庭に面しているのでご覧のとおりの明るさ。回廊のような廊下が端正な表情を見せて。

2F 寝室

南と西に窓を大きくとった寝室。2階の天井は、構造用面材で断熱材をはさんだ構造用パネルを、そのまま仕上げ材として使用。

3畳のウォークインクローゼットを設置。部屋をシンプルに保つのに活躍しています。

1F 玄関

玄関ドアは道路から見えない位置にあるので、採光のためガラス入りをオーダー。建物の脇を見ると、敷地内の段差がよくわかります。

玄関ホールには収納をたっぷりと。棚に沿ってL字形に曲がってリビングに入ります。ホールとリビングの間に扉はありませんが、玄関から見えない配置です。

ガラスの玄関ドアのおかげで十分な明るさ。夜はロールスクリーンを。

取っ手はコンクリートの配筋に使う「異形鉄筋」。個性的なうえ、握りやすいという実用性も。

Profile

俊之さん、純子さん、9歳の歩(あゆむ)くん、7歳の翼くんの4人家族。俊之さんは、土日は息子さんが参加する少年サッカーのコーチを。純子さんは本誌を熟読して家づくりに臨んだとか。

DATA

家族構成:夫婦+子ども2

敷地面積:127.80㎡(38.66坪)

建築面積:68.48㎡(20.72坪)

延べ床面積:104.57㎡(31.63坪)

 FM2F68.48㎡+2F36.09

構造・工法:木造2階建て(軸組み工法)

工期:20137月~12

本体工事費:2100万円(外構、キッチン、設備機器/税込み)

3.3㎡単価 :66万円

設計: ノアノア空間工房    03-6434-7401

    www.noanoa.cc

構造設計 :クレモナ建築構造研究所 03-3478-2403

施工: ㈱栄伸建設 0422-31-5571

 

設計のポイント

ノアノア空間工房

大塚泰子さん

1971年生まれ。日本大学大学院生産工学部建築工学修士課程修了。アーツ&クラフツ建築研究所入社。2003年、現事務所を設立。「amicafe」で釧路市景観賞奨励賞受賞。大妻女子大学非常勤講師。

敷地内に高低差があり、しかも予算が限られているとのこと。敷地を平坦にするとコストがかかってしまうので、地形をくずさずに、その上に家をのせられないかと考えました。段差を逆手にとり、階段のある中庭を中心に、回遊するように上がっていくプランに。中庭から家じゅうに光をとり込みます。元気なお子さんたちなので、中庭を公園に見立てて、活動的な場にしてほしいという思いがありました。ご夫妻は私の提案を素直に受け入れてくださり、非常にやりがいがありました。

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